FXトレードを行う上で、ゼロカットシステムの存在を知っている方は多いのではないでしょうか。ゼロカットシステムとは、取引で発生した損失が証拠金を上回った場合に、超過分を帳消しにしてくれる仕組みのことを指します。つまり、預け入れた証拠金以上の損失が出ても、借金を背負うことはないというわけです。
しかし、このゼロカットシステムを採用しているのは海外のFX業者のみで、国内の業者では導入されていません。これは一体なぜなのでしょうか?
本記事では、国内業者にゼロカットシステムがない理由や、ゼロカットシステムのメリット・デメリットについて詳しく解説していきます。
海外FXのゼロカットシステム
ゼロカットシステムとは、トレーダーが取引で損失を出し、証拠金がゼロになった際に借金を負わせないようにFX業者が強制的に決済を行うシステムのことです。
例えば、100万円をFX業者に預けてトレードを行い、150万円の損失が発生した場合、証拠金を超過する50万円の部分は帳消しとなります。損失自体が無くなるわけではないので、預けた資金の100万円は支払われて0円になります。
ゼロカットシステムは海外FX業者でのみ採用されており、国内のFX業者にはありません。そのため、国内FX業者を利用するとトレードで証拠金がマイナスになった際に、借金を背負う可能性があります。
説明だけを聞くと、ゼロカットシステムはメリットしかないように思えます。しかし、一定の損失が発生した段階でゼロカットシステムの前にロスカットが発動します。さらに、通常の取引であればロスカット前に自分で損切りをするので、ゼロカットシステム自体は相場の急変動に対する保険のようなものだといえます。
また、ゼロカットシステムはトレーダーが借金を免れる一方で、システムが発動した直後に相場が戻ってきても既に決済されているため、利益にできないというデメリットもあります。
ゼロカットシステムの仕組み
ゼロカットシステムがあるFX業者は、基本的にトレーダーからの取引内容をすぐにオンライン市場へ流すのではなく、一旦自社システムで処理する仕組みとなっています。
これにより、トレーダーが証拠金以上の損失を出しても、自社内だけで処理することができます。
ロスカットとの違い
ロスカットとは、業者ごとに設定された証拠金維持率の水準を超える損失が発生した際に、ポジションを強制決済する仕組みです。
ロスカットの水準は業者ごとに決まっており、証拠金維持率が水準を下回ることで発動します。通常は残高が無くなる前にロスカットが発動するので、マイナスになることはありません。
そのため、ゼロカットシステムはロスカットが間に合わないような急激な値動きが起きた場合に発動します。
海外FX業者では、20%~30%の範囲でロスカット水準を設定していて、国内の多くのFX業者では、50~100%となっています。
そのため、海外FX業者よりも国内FX業者の方がロスカットが発生しやすいです。
追証との違い
国内FX業者では、後述する法律によりFX業者がトレーダーの損失を補填する行為が禁止されているため、ゼロカットシステムは採用されていません。
そのため、一定の割合を超える損失が出た場合は「追証」と呼ばれる追加の証拠金が必要になります。追証が支払えないと、ロスカットが強制的に執行され、損失が確定します。
ゼロカットシステムが発生するケース
先ほどゼロカットシステムの前にロスカットがあるので証拠金はマイナスにはならないと説明しましたが、例外もあります。
それは、為替レートが一瞬で大きく急激に動き、ロスカットが間に合わないケースです。
2015年のスイスフランショックでは、短時間で30円以上のレートが動いたため、ロスカットが間に合いませんでした。
海外FXではゼロカットが発動したため、トレーダーが借金を負うことはありませんでしたが、国内FXでは少額でFXを始めた方も、入金額以上の支払いが発生したり、数百万円の追証が発生した方もいたようです。
ゼロカットシステムのメリット
ゼロカットシステムのメリットは以下の通りです。
- 金融ショック時のリスクヘッジ
- ハイレバレッジ取引のリスク軽減
それぞれについて解説します。
金融ショック時のリスクヘッジ
市場が大きく変動した際に、ロスカットが間に合わず、証拠金以上の損失が出てしまう可能性があります。しかし、ゼロカットシステムがあれば、その超過分は帳消しになるため、予期せぬ損失から身を守ることができます。
ハイレバレッジ取引のリスク軽減
レバレッジを高く設定して取引を行うと、わずかな相場の変動でも大きな損失につながる可能性があります。しかし、ゼロカットシステムがあれば、レバレッジを上げても、証拠金以上の損失を出すリスクを回避できます。
資金を効率よく増やすために普段からハイレバレッジ取引している方は、追証リスクのないゼロカットシステムがある海外FX業者の利用をおすすめします。
ゼロカットシステムのデメリット
ゼロカットシステムのデメリットは以下の通りです。
- 手数料が高い
- 雑な取引(ギャンブルトレード)になる
それぞれについて解説します。
手数料が高い
ゼロカットシステムは取引で生じたマイナス分を、FX業者が代わりに負担する仕組みです。そのため、海外FX業者は国内FX業者に比べてスプレッド(手数料)を高く設定しています。
さらに、海外FXは時間や流通量によってスプレッドが変動することもあるので注意しましょう。
雑な取引(ギャンブルトレード)になる
損失がゼロになることを前提に、安易にハイレバレッジで取引を行ったり、無計画なトレードを繰り返したりするトレーダーも少なくありません。しかし、これでは本末転倒です。ゼロカットシステムに依存するのではなく、しっかりとしたトレードプランを立て、リスク管理を行うことが重要です。
ゼロカットシステムは金融ショックなどに備えた保険のようなものです。また、ゼロカットシステムを積極的に狙おうと無理なハイレバレッジ取り引きをしていると、悪用とみなされてアカウントが停止される可能性もあるので注意しましょう。
ゼロカットシステムの注意点
ゼロカットシステムの注意点は以下の通りです。
- 安全性や過去実績の確認が必要
- アカウント停止の可能性がある
- サポートセンターへの連絡が必要な場合がある
それぞれについて解説します。
安全性や過去実績の確認が必要
海外FX業者の中には、悪質な業者もいてゼロカットシステムを導入しているのに追証を請求されるケースがあります。
ゼロカットシステムがあるからといってすべての業者が安全とは言えません。海外FX業者を選ぶ際は、業者ごとの口コミやレビュー記事などを参考に安全性や過去の実績を確認するようにしましょう。
アカウント停止の可能性がある
前述の通り、ゼロカットの悪用は禁止されています。FX業者ごとに判断基準が違いますが、次のような取引を行うと規約違反となる可能性があるので注意しましょう。
- 複数業者を使った両建て:ゼロカットを狙って、複数業者での両建てによってリスクフリーの取引を行う
- 経済指標ハイレバレッジ取引:ゼロカットを保険に経済指標の発表に伴う市場の急変動を利用し、ハイレバレッジ取引を行う
- 窓開け狙いの取引:閉場から開場の間に生じる大きな価格変動を狙った取引
サポートセンターへの連絡が必要な場合がある
ゼロカットシステムの発動タイミングを確認しておくことも大切です。発動のタイミングや条件は、業者によって異なります。中には、自動的にゼロカットが発動しない業者もあり、その場合は自分でサポートに連絡する必要があります。取引を始める前に、利用する業者のゼロカットシステムの詳細を確認しておきましょう。
国内FXにゼロカットシステムが無い理由
国内FXにゼロカットシステムが無い理由は以下の通りです。
- 法律で禁止されているから
- 業者側の収益源がスプレッド以外にもあるから
それぞれについて解説します。
法律で禁止されているから
国内FXでゼロカットシステムがないのは、日本の法律で禁止されているからです。
日本では金融商品取引法でトレーダーの損失を補填することが禁止されています。そのため、損失補填に該当するゼロカットシステムは国内FX業者では利用できません。
(損失補塡等の禁止)
第三十九条 金融商品取引業者等は、次に掲げる行為をしてはならない。
二 有価証券売買取引等につき、自己又は第三者が当該有価証券等について生じた顧客の損失の全部若しくは一部を補塡し、又はこれらについて生じた顧客の利益に追加するため当該顧客又は第三者に財産上の利益を提供する旨を、当該顧客又はその指定した者に対し、申し込み、若しくは約束し、又は第三者に申し込ませ、若しくは約束させる行為
三 有価証券売買取引等につき、当該有価証券等について生じた顧客の損失の全部若しくは一部を補塡し、又はこれらについて生じた顧客の利益に追加するため、当該顧客又は第三者に対し、財産上の利益を提供し、又は第三者に提供させる行為
引用:金融商品取引法
海外FX業者と国内FX業者では収益構造が違うから
FXの注文方式は大きく以下の2つに分けられます。
- NDD(ノンディーリングデスク)方式
- DD(ディーリングデスク)方式
海外FX業者で採用されているNDD方式では、業者がトレーダーから受けた注文を自動的にインターバンク市場に流します。インターバンクとは金融機関の間で通貨を取引する市場のことです。そのため、FX業者が顧客の注文を受けなかったり、インターバンクへ流さずに抱えるといったことができません。そういった背景があるため、海外FX業者はゼロカットシステムを採用する代わりに、スプレッドを大きくすることで収益を得ています。
一方、国内FX業者に採用されているDD方式の収益源はトレーダーの損失です。
DD方式を採用している国内FX業者では、顧客から受けた注文をインターバンクへ流さずに自社で抱えこんで処理することが可能です。その場合、トレーダーに損失が発生した場合、国内FX業者は収益が発生します。
以上のような収益構造の違いもあり、国内FX業者はトレーダーの損失を補填して自社の利益を減らすゼロカットシステムを採用していません。
国内FX業者の選び方
国内FX業者は安全性と信頼性が高いため、初めてFX取引を始める人や安定した取引環境を求める人におすすめです。
さらに、スプレッドが狭いことや出金手数料が無料の為、トータルコストを抑えやすいこともメリットです。
海外FXのようなハイレバレッジでの取引はできませんが、その分安定したトレードが行えるため、リスクリワードを重視するトレーダーやFX初心者にとっては、国内FXがおすすめです。
国内FX業者を選ぶポイントは以下の通りです。
- スプレッドが狭い
- 取引ツールが使いやすい
- 少額取引が可能
それぞれについて解説します。
スプレッドが狭い
国内FX業者を選ぶ際は、スプレッドに注目し、より狭いスプレッドの業者を選びましょう。たとえ少額の差でも、取引を繰り返す程に大きな差になります。
スプレッドとは、FX取引における売値と買値の差のことを指し、スプレッドが狭いほど、取引コストが低いことを意味します。国内FX業者の中でも、スプレッドの狭さにはばらつきがあるため、比較検討することが重要です。
米ドル/円のスプレッドが0.2銭の業者と0.5銭の業者では、1取引あたりの差は小さいですが、取引量が多くなるほどその差は大きくなります。また、スプレッドが変動する業者もあるため、平均的なスプレッドの狭さだけでなく、変動幅も確認しておきましょう。スプレッドが狭い業者を選ぶことで、コストを抑えながら取引できるようになります。
取引ツールが使いやすい
FX取引を行う上で、取引ツールの使いやすさは非常に重要です。注文の入力や決済、チャートの分析など、スムーズに行えるかどうかが取引の効率に直結します。
国内FX業者の提供する取引ツールは、それぞれ特徴があります。例えば、シンプルで初心者にも使いやすいツールから、多機能で上級者向けのツールまで様々です。また、スマートフォンアプリの使い勝手も業者によって異なります。
そのため、自分に合った取引ツールを選ぶために、デモ取引や口座開設後の無料期間を利用して、実際に操作してみることがおすすめです。使いやすい取引ツールを選ぶことで、ストレスなくトレードに専念できます。
少額取引が可能
また、少額で取引できることも大きなポイントです。
初心者のうちは少額で取引を開始して、トレードそのものや取引の相場感覚に慣れることが大切です。取引に慣れていないと、損失が発生した際に冷静な判断ができずに、負債分を取り返そうと無理な取引をすることも珍しくありません。
下記におすすめの少額取引可能な国内FX業者を紹介するので参考にしてください。
おすすめの国内FX業者
おすすめの国内FX業者について紹介します。
業者名 | 特徴 | おすすめポイント |
楽天証券 | スプレッドが狭い 取引ツールが充実楽天ポイントでの取引可 | 取引コストを抑えられる 初心者でも安心して始められる他の投資サービスと併用可能 |
GMO外資 | 1000通貨から取引可能 スプレッドが狭い高水準のスワップポイント分析ツール・取引プラットフォームが使いやすい | 少額からリスクを抑えて取引できる 短期から中長期まで様々なトレードスタイルに対応いつでもどこでもトレードチャンスを逃さない |
松井証券 | 1通貨から取引可能 スプレッドが固定レバレッジ最大25倍シンプルで直感的な取引ツール | リスクを最小限に抑えられる 投資プランが立てやすいスマホアプリで気軽にポジションチェック可能初心者に最適な使い心地 |
楽天証券
楽天証券のFXサービスは、スプレッドの狭さと充実した取引ツールが特徴です。
MARKETSPEED FXという高機能な取引プラットフォームを無料で利用できるほか、WEBブラウザとスマートフォンアプリでも快適に取引ができます。スプレッドが狭いため、取引コストを抑えることができ、利益を最大化しやすいです。
また、楽天証券は信頼性の高い大手証券会社であり、万が一の場合でも顧客資産は保護されます。さらに投資信託や株式取引など、他の投資サービスも併せて利用できる点もメリットです。デモトレードで練習してからリアル取引に移行できるので、初心者でも安心して始められます。楽天ポイントを使ってFX取引ができるのも楽天証券ならではの特徴です。
GMO外資
GMO外資は、1000通貨という少額から取引を開始できるのが大きな特徴です。
これにより、初心者でもリスクを抑えて為替取引を利用することができます。また、スプレッドが狭く設定されているため、取引コストも節約しやすいです。
高水準のスワップポイントを提供しているのもGMO外資の魅力です。短期売買だけでなく、中長期の持ち越し取引でもスワップ金利を得やすく、様々な投資スタイルに対応可能です。
分析ツールや取引プラットフォームの使いやすさにも定評があります。特にスマートフォンアプリは直感的な操作性で人気を集めており、いつでもどこでもトレードチャンスを逃さずに済みます。
松井証券
松井証券最大の特徴は、なんと1通貨からFX取引を始められること。これは業界でもトップクラスの少額取引で、原資の乏しい初心者でも気軽にトレードを開始できます。リスクを最小限に抑えつつ、FXの実践を積むことができます。
もちろんコストの面でもメリットがあります。全20通貨ペアのスプレッドが原則固定されており、投資プランが立てやすいのが特徴です。レバレッジは最大25倍まで選択可能で、利益の効率的な積み上げを狙えます。
松井証券の取引ツールは、シンプルかつ直感的な使い心地で初心者に最適。チャートや注文画面など、最低限の機能に絞られているので、複雑な操作に悩まされることなくトレードに専念できます。スマートフォンアプリも利便性が高く、いつでも気軽にポジションをチェックできるのが嬉しいポイントです。FXを始めたばかりという方には、松井証券が特におすすめの業者です。
ゼロカットシステムについてのよくある質問
ゼロカットシステムについてのよくある質問について解説します。
残高がマイナスになってるのにゼロカットが発生しないのはなぜ?
ゼロカットが発動するタイミングは各FX業者によって違います。マイナス残高になった直後にゼロカットが発動する業者や、数時間かかる業者など様々です。また、自動でゼロカットが発動されず、IronFXのように、ゼロカット発動にサポートへの連絡が必要なFX業者もあるので注意しましょう。利用しているFX業者のゼロカットがいつ、どのように発動するのかは事前に確かめておきましょう。
ゼロカットが発生しないケースはある?
FX業者で禁止されているような悪質な取引をした場合、ゼロカットが適用されない可能性があります。
悪質な取引をしていないにもかかわらず、ゼロカットが発動しない場合は、カスタマーサポートへ問い合わせてみましょう。
海外FXでゼロカットシステムの悪用とはどんな行為ですか?
ゼロカット目的のハイレバレッジ取引は悪用とみなされる可能性があります。その場合、追証の請求だけでなく、口座凍結されるケースもあるので注意してください。
まとめ
本記事では、ゼロカットシステムの概要とメリットデメリット、国内FX業者の選び方について解説しました。
ゼロカットシステムとは、不意の金融ショックなどでロスカットが間に合わなかった際にマイナス残高を帳消しにしてくれる保険のようなものです。これをあてにして、ハイレバレッジで無理な取引をすると悪質な取引を行っていると判断されかねないので注意しましょう。
ゼロカットシステムのメリット
- 金融ショックに強い
- ハイレバレッジ取引のリスク軽減
ゼロカットシステムのデメリット
- 手数料が高い
- 雑な取引(ギャンブルトレード)になる
FX業者を選ぶ際は、それぞれのメリットデメリットをしっかり比較して決めましょう。
プロップファームという選択肢(リスクを限定して運用)
本記事では、ゼロカットシステムの概要とメリットデメリット、国内FX業者の選び方について解説しました。
ゼロカットシステムには、メリット・デメリットがありますが、いずれにせよ「リスクを抑えて運用する」ことが重要なポイント。
そこで、リスクを限定して取引するためにおすすめなのが、「プロップファーム」です。
会社の自己資金を使ったディーリング(売買取引)を専門に行う金融会社のことです。外部から資金を集めるのではなく、あくまで自己資金のみで運用します。
トレーダーはプロップファームのチャレンジプラン(評価ステップ)に挑み、チャレンジにクリアすると実際の収益に基づく「パフォーマンス報酬」が支払われます。
取引自体はシミュレートしたデモ環境で行われているため、損失が発生した場合もリスクを負うことはありません 。
そのため、かかるコストは初回のチャレンジ購入費用のみで、その後の費用は一切かからず損失もないです。
プロップファームもゼロカットシステムを採用しているので、追証もありません。

僕もリスクフリーで実力を試しながら収益も得られるこの仕組みが、プロップファームの大きな魅力だと感じています!
例えば、日本で一番有名なプロップファームである「Fintokei(フィントケイ)」のサファイヤプランの場合、チャレンジ料金の約10万円を支払い、評価プロセスをクリアすると、2000万円の口座を運用することができます。
ここで得た利益の80%がトレーダー報酬となります。80%の利益分配率って凄くないですか?
2000万円の資金があれば、月に20~30万円程度の利益を出すことは難しくありません。トレードで会社員の手取り程度の利益を手にすることが現実的に可能なので、チャレンジしない理由なんてないです。
Fintokeiの仕組みや始め方については、別記事で詳しく解説していますので、興味のある方は是非チェックしてみてください!

