移動平均線とは、ある一定期間の価格の平均値を連続的に計算し、グラフ上に線として表示したものです。
移動平行線という言葉を聞いたことがあるものの、「移動平均線って結局どんなもの?」「実際に使うにはどうしたらいいの?」といった疑問を抱いている方も多いのではないでしょうか。
本記事ではこういった疑問を持つトレーダーの方に向けて移動平均線の種類や実際のトレード手法、使用するメリット、デメリットについて解説します。
移動平均線とは

移動平均線とは、ある一定期間の価格の平均値を連続的に計算し、グラフ上に線として表示したものです。例えば、20日移動平均線であれば、直近20日間の価格の平均値を計算し、その値を日々つないでいくことで線になります。
移動平均線の計算方法
移動平均線を求めるには、設定した期間の終値を平均します。例えば、5日移動平均線の場合、直近5日間の終値の合計を5で割ります。
この計算を毎日行い、算出された値を点で打ち、それらを線で結んだものが移動平均線となります。
移動平均線の活用法
移動平均線を分析することで、相場の方向性や勢いを予測できます。
移動平均線の向きに注目することでトレンドの方向性が分かります。上を向いていれば上昇トレンド、下を向いていれば下降トレンドを示しています。
また、移動平均線が水平に近ければ、レンジ相場である可能性が高いです。
移動平均線の角度はトレンドの強さを示しています。角度が急であるほど、トレンドが力強いことを意味します。
逆に、角度が緩やかな場合は、トレンドの勢いが弱まっており、近いうちにトレンドが終了する可能性があります。
移動平均線の設定

移動平均線の期間設定は、トレーダーの戦略やスタイルによって異なります。しかし、一般的によく用いられる設定があるので、参考にしてみてください。
よく使われる移動平均線の期間は、5日、21日、25日、75日、100日、200日などです。
これらの期間は、特別な法則に基づくものではありませんが、多くのトレーダーが採用しているため、相場の動きを反映しやすいと考えられています。
短期移動平均線と長期移動平均線の組み合わせでは、5日と25日、25日と75日、75日と200日などが人気です。
多くのトレーダーと同じ設定を使うことで、勝率を上げることができるかもしれません。
また、自分の取引スタイルに合わせて、移動平均線の期間を調整することも大切です。
各取引スタイルに適した移動平均線の設定の目安を解説します。
スキャルピング
スキャルピングでは、通常1分足や5分足を使用します。そのため、長期的なトレンドよりも、短期的なトレンドの分析に重点を置いた方が良いです。
1分足や5分足では、13日、20日、21日などの短期移動平均線でトレンドの方向性を把握し、5日や10日の移動平均線でトレンドの直近の強さを判断するのが一般的です。
デイトレード
多くのデイトレーダーは、1時間足や4時間足でトレンドを分析し、5分足や15分足でエントリーポイントを探ります。1時間足や4時間足では、5日、10日、20日などの短期移動平均線を使ってトレンドを把握し、5分足や15分足では、50日、60日、75日などの中期移動平均線を表示させて分析するのがおすすめです。
スイングトレード
スイングトレードでは、日足や週足で長期的なトレンドを把握し、1時間足や4時間足でエントリーポイントを探るのが一般的です。日足や週足では、5日、10日、20日などの短期移動平均線を使用し、1時間足や4時間足では、50日、60日、75日などの中期移動平均線を表示させるのがおすすめです。
移動平均線を使ったFXトレード手法
移動平均線を使ったFXトレード手法は以下の通りです。
- グランビルの法則
- ゴールデンクロスとデッドクロス
- 他のテクニカル指標との組み合わせによるトレード
それぞれについて解説します。
グランビルの法則

グランビルの法則は、アメリカの投資家ジョゼフ・グランビルが提唱したトレード手法で、移動平均線とローソク足の位置関係から売買シグナルを判断します。
この法則では、以下の4つのパターンで買いシグナルが出ると考えます。
4つの買いサイン
- 移動平均線が上向きに転じ、ローソク足が下から移動平均線を上抜けた場合
- 上向きの移動平均線に対し、ローソク足が一時的に下抜けした後、再度上抜けした場合
- 上向きの移動平均線に向かってローソク足が下落し、移動平均線の手前で反発した場合
- ローソク足が下向きの移動平均線から大きく乖離した場合
4つの売りサイン
- 移動平均線が下向きに転じ、ローソク足が上から移動平均線を下抜けた場合
- 下向きの移動平均線に対し、ローソク足が一時的に上抜けした後、再度下抜けした場合
- 下向きの移動平均線に向かってローソク足が上昇し、移動平均線の手前で反落した場合
- ローソク足が上向きの移動平均線から大きく乖離した場合
ゴールデンクロスとデッドクロス
ゴールデンクロスとデッドクロスは、2本の移動平均線(短期と長期)のクロスを利用したトレード手法です。

ゴールデンクロスは、短期移動平均線が長期移動平均線を下から上に抜けた状態を指します。これは強い上昇トレンドを示すシグナルであり、買いポイントと考えられています。ゴールデンクロスが発生すると、多くのトレーダーが買いポジションを取るため、さらに価格が上昇しやすくなる傾向があります。

一方、デッドクロスは、短期移動平均線が長期移動平均線を上から下に抜けた状態を指します。これは強い下降トレンドを示すシグナルであり、売りポイントと考えられています。
ゴールデンクロスで買い、デッドクロスで売るというシンプルなルールで取引することで、トレンドに乗ったトレードができるようになります。ただし、クロスのタイミングだけでエントリーすると、すでにトレンドが始まっている場合があるので注意が必要です。
他のテクニカル指標との組み合わせによるトレード
また、移動平均線は以下のような他のテクニカル指標と組み合わせることで、より効果的に相場を分析することができます。
- MACD
MACDは、2本の移動平均線の差を利用したオシレーター系の指標です。移動平均線でトレンドの方向性を確認し、MACDのクロスやダイバージェンスを利用してエントリーのタイミングを計るのが有効です。
- RSI
RSIは、買われすぎや売られすぎの状態を判断するのに役立つ指標です。移動平均線と組み合わせることで、トレンドの方向性と強弱を総合的に判断できます。
- ボリンジャーバンド
ボリンジャーバンドは、移動平均線を中心として標準偏差を利用したバンドを表示する指標です。移動平均線でトレンドを確認しつつ、ボリンジャーバンドの上下のラインを利用して、トレンドの強弱や調整局面を判断するのに役立ちます。
3種類の移動平均線について

代表的な移動平均線として以下の3種類があります。
- 単純移動平均線
- 指数平滑移動平均線
- 加重移動平均線
それぞれの特徴について解説します。
単純移動平均線

単純移動平均線(SMA:Simple Moving Average)は、一定期間の終値を平均してチャートに表したものです。
一番シンプルでメジャーな移動平均線ですが、トレンド発生時など相場が急に動いた場合、期間内の全ての終値を単純に平均しているので、相場の急な動きに反応が遅れるというデメリットがあります。
加重移動平均線

加重移動平均線(WMA:Weighted Moving Average)は、期間中のすべての価格を同等に扱う単純移動平均線に対し、直近の価格を重視した移動平均線です。
直近の価格を重視しているため、値動きに素早く反応する傾向にあり、短期トレード向きです。しかし、レンジ相場や急激な値動きの時には機能しなくなるのがデメリットです。
計算方法は、5日平均線の場合、5日目の価格を5倍、4日目の価格を4倍、3日目の価格を3倍というように、直近の価格をその日数で掛けて、価格に重み付けをします。
指数平滑移動平均線

指数平滑移動平均線(EMA:Exponentially Smoothed moving Average)は、単純移動平均線の計算に直近のレートを2回足して平均値を計算します。
過去の値動きすべてを計算対象としつつ、直近の値動きにも比重を置いた計算方法で求められます。
値動きに敏感に反応するので、感度は高くなりますが、ダマシが多くなるといったデメリットもあります。
FXで移動平均線を使うメリット
FXで移動平均線を使うメリットは以下の通りです。
- トレンドの方向性と強さを視覚的に捉えられる
- 乖離率の大きさから売りサインと買いサインの判断ができる
- 支持線や抵抗線として機能する
それぞれについて解説します。
トレンドの方向性と強さを視覚的に捉えられる
移動平均線は、価格の短期的な変動を除去し、トレンドの方向性を明確にしてくれます。上向きの移動平均線は上昇トレンド、下向きの移動平均線は下降トレンドを示します。また、移動平均線の角度によって、トレンドの強さも判断できます。
これにより、チャートを一目見ただけで、相場の大局的な流れを把握することができます。トレンドフォロー型のトレードでは、移動平均線の方向性に沿ってポジションを取ることで、効率的なトレードが可能です。
乖離率の大きさから売りサインと買いサインの判断ができる
移動平均線は、乖離率の大きさから売りサインと買いサインを判断することができます。トレンドが強い上昇または下降になると、チャートの値動きが移動平均線から離れ、乖離が大きくなることがあります。そして、移動平均線と現在のレートの乖離が大きいと値動きが反転する性質があるといわれています。
ローソク足が移動平均線よりも上に大きく乖離している場合は買われすぎていて、下に大きく乖離している場合は売られすぎているという判断ができます。そして、移動平均線との乖離を小さくする動きが現れるようになります。
支持線や抵抗線として機能する
移動平均線は支持線または抵抗線としても機能します。
移動平均線は多くのトレーダーが使用していて、移動平均線付近での売買サインを判断しています。そのため、ローソク足は移動平均線を意識した動きをすることが多いです。
上昇トレンド中にローソク足が移動平均線付近まで下落しても、支持線として機能することがあり、依然上昇トレンドが継続されることがあります。
同じように、下降トレンド中にローソク足が移動平均線付近まで上昇していても、移動平均線が抵抗線として機能し、下降トレンドを継続されることがあります。
FXで移動平均線を使うデメリット
FXで移動平均線を使うデメリットは以下の通りです。
- 相場の変化に対して遅行性がある
- ダマシが発生する可能性がある
- レンジ相場では有効性が低い
それぞれについて解説します。
相場の変化に対して遅行性がある
移動平均線は、過去の価格を基に計算されるため、相場の変化に対して遅行性があります。特に、長期の移動平均線ほど、この傾向が強くなります。
一方で、設定期間を短くすると値動きには敏感に反応できるようになりますが、ダマシが発生するので注意が必要です。
ダマシが発生する可能性がある
移動平均線は、ダマシが発生する可能性があることに注意が必要です。例えば、ゴールデンクロスが発生しても、実際には上昇トレンドが継続しないケースがあります。
こうしたダマシを避けるためには、クロスした後の価格の動きに注意することが重要です。また、移動平均線だけでなく、他の指標も併用し、総合的に判断しましょう。
レンジ相場では有効性が低い
移動平均線は、トレンド相場では非常に有効なツールですが、レンジ相場では有効性が低くなります。レンジ相場では、価格が一定のレンジ内で上下を繰り返すため、移動平均線からは明確なシグナルが出にくいです。
レンジ相場では、移動平均線だけに頼るのではなく、他のオシレーター系の指標を併用するなど、相場の特性に合わせた分析が必要です。
FXで移動平均線を使うときのコツ
FXで移動平均線を使うときのコツは以下の通りです。
- 移動平均線の数を増やし過ぎない
- マルチタイムフレーム分析を取り入れる
- 他のテクニカル指標と組み合わせる
それぞれについて解説します。
移動平均線の数を増やし過ぎない
移動平均線の本数を増やし過ぎると、チャートが見づらくなるので慣れない間は表示する数に注意しましょう。また情報量が多いと、どのサインを目安にして判断するのか分からなくなり、トレンドの兆候を見逃す原因になります。
先ずは、少数の移動平均線で経験を積み、取引に慣れてきたら少しずつ本数を増やしましょう。
マルチタイムフレーム分析を取り入れる
マルチタイムフレーム分析とは、複数の時間足を使い相場分析を行う手法です。
実際のチャートでは時間足次第で、トレンドの発生や強さが異なることがあります。
そのため、ダマシのリスクを減らすために、上位足とトレンドの方向性が一致していることを確認しましょう。
他のテクニカル指標と組み合わせる
移動平均線だけで相場分析を行うと、ダマシが発生することがあります。
ダマシを回避するには、移動平均線と他のテクニカル指標と組み合わせて使用し、相場を分析することが重要です。
先述したMACDやRSI、ボリンジャーバンドといったテクニカル指標と組み合わせるのがおすすめです。
まとめ
本記事では、移動平均線の基本から実際のトレード手法、使用するメリット・デメリットについて解説しました。移動平均線は有名なテクニカル指標で、世界中で多くのトレーダーが実際に相場分析に使用しています。
移動平均線を使ったFXトレード手法
- グランビルの法則
- ゴールデンクロスとデッドクロス
- 他のテクニカル指標との組み合わせによるトレード
移動平均線メリット
- トレンドの方向性や転換を確認できる
- 乖離率の大きさから売りサインと買いサインの判断ができる
- 支持線や抵抗線として機能する
移動平均線デメリット
- 相場に対しタイムラグがある
- ダマシの発生に注意する必要がある
- レンジ相場では上手く機能しない
移動平均線は他のテクニカル指標と組み合わせることでより効果的に使えるので、いろいろ試してみて自分の使いやすい手法を探しましょう。
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